「海」小川洋子

恋人の家を訪ねた青年が、海からの風が吹いて初めて鳴る“鳴鱗琴”について、一晩彼女の弟と語り合う表題作、言葉を失った少女と孤独なドアマンの交流を綴る「ひよこトラック」、思い出に題名をつけるという老人と観光ガイドの少年の話「ガイド」など、静謐で妖しくちょっと奇妙な七編。「今は失われてしまった何か」をずっと見続ける小川洋子の真髄。著者インタビューを併録。

「ガイド」を読んで、私は地中海の明るいヨーロッパの風景を思い描いた。
この話の舞台が、いったいどこの国のどの辺りなのかなんていうことは、余り意味のある考察ではないし、恐らく正解は無いのだと思う。
きっと、この話の舞台は、読み手がそれぞれ好き勝手に思い描いていいものだと思うし、それでこそ、たくさんの人が一つの小説をそれぞれに読み味わうということの面白さになっていくのだと思う。
「ガイド」のような爽やかな物語の中で、読み手の自由を演出するなんて、偶然にしろ面白いなと思った。

海 (新潮文庫)

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