Top Page: メイン
Previous Page: 「地図」太宰治
Next Page: 「惜別」太宰治

「新ハムレット」太宰治

デカダンス文学の旗手、太宰のもう一つの面、天稟の文学的才能を存分に発揮した知性的作品群の中から、西洋の古典や歴史に取材した作品を収める。「ハムレット」の戯曲形式を踏みながら、そこに現代人の心理的葛藤と現代的悪の典型を描き込んだ表題作、全作品中もっとも技巧をこらした「女の決闘」、人生の本質的意味を数頁に結晶させた「待つ」ほか「古典風」「乞食学生」の全5編。

太宰のもう一つの面……とあるが、この書もまた太宰に他ならない。

小説というのは登場人物の意志がハッキリしており、それに従って彼らは発言し行動する。学校の国語のテストなんかでよくある“傍線Aのときの主人公の心情を100字以内で答えなさい”的な設問が成り立つのもその訳である。
しかし、いったい人間とはそんなものなのかどうか。常に葛藤を抱え、右へ左へ行き惑い、そして自分で自分のことをはっきりと捕らえられない。そんな“傍線Aのときの主人公の心情”は誰しも計り知れないものであり、“神のみぞ知る”こそが、この設問の答えに他ならない。

「新ハムレット」では、誰一人として嘘をついていない。
“嘘をついていない。”というと語弊があるが、自分のその時点の気持ちに対して嘘をついていないのである。
現代的悪云々とあるが、これは悪ではなく、普遍的人間の在り方でしかないと思う。

「乞食学生」はただの夢落ちでしかないが、それでも飄々とした展開の面白い話だった。

新ハムレット (新潮文庫)

Trackback Pings

TrackBack URL for this entry:

No trackbacks found.

Comments

No comments found.

Post a Comment

Remember personal info?

Search this site