- February 22, 2010
- Category: BOOK
「優駿」宮本輝
生れる仔馬が牡馬でありますように。風の申し子のように速く、嵐みたいに烈しく、名馬の天命をたずさえて生れますように…。若者の祈りに応えて、北海道の小さな牧場に、1頭のサラブレッドが誕生した。オラシオン(祈り)と名づけられた仔馬は、緑と光の原野のなかで育ち、順調に競走馬への道を歩みはじめるが、それと共に、登場人物ひとりひとりの宿命的な劇が、幕を開けた―。吉川英治文学賞受賞。
わが家から歩いて10分程度のところに大学の馬術部用の馬場があって、休日に娘と散歩で通ることにしている。
娘にとっては犬猫以外の動物を見れるチャンスとあって、運良く馬術部の練習時間に行き当たった場合は「パパとお馬さん見たの。」と妻に自慢げに報告している。
私にとって馬とはそうしたものである。
この「優駿」が映画で上映され武豊のような人気ジョッキーがでてきたこともあって、競馬のイメージが少し変わった。
単なる賭け事の一環として捉えられていた競馬に、馬券は買わないけど馬を見に行きたいという若者達が進出してきた。
私の身の回りでも、どの馬券を買ったという話ばかりでなく、どの馬が素敵だとか話す友達が何人も居たが、私は結局、競馬にも馬にも武豊にも興味を見出せなかった。
「サラブレッド」という言葉は人間にも使われる。
生まれが良くてエリートな人とかをよくそう言う。
基本的には褒め言葉だと思うけれど、私には揶揄する言葉のように思える。
「優駿」を読み、競走馬にとって血統というものがいかに重要視されているかを知るにつけ、そうした良い馬の子で無ければ良い馬にならないといったガチガチの考え方に反感を抱く。
本当のところは、遺伝的要素が競走馬に向いているいないの要素になり得るのかもしれないが、ならば人間も優れた人の血筋でなければ優れた人にはなれないというのか、と考え、暗澹とする。
所詮凡庸な血に生まれた私は凡庸であり、その子供である娘もまた凡庸でしかなく……それでは夢もへったくれも無い。
オラシオンのレース展開には手に汗を握ったけれど、じゃあ競馬でも見に行ってみようという気は一向に起こらず、私と娘は凡庸な目で近所の馬場を走る凡庸な馬を散歩がてらに見に行くことで十分だと思った。



もみお(♂)


